今月の逸品

ただいま展示中の「今月の逸品」

鄙の矜持

Yet to that past
which her younger generation now affect to despise
Japan will certainly one day look back...

(しかし、若い世代が蔑視している日本の過去も、
必ずやいつか顧みる日が来るだろう)

ラフカディオ・ハーン 「日本人の微笑」

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磁器染付碗

江戸時代末~明治時代(約120~150年前)

多摩ニュータウン№243・244遺跡(町田市小山ヶ丘)

展示したのは村落跡から出土した明治頃の飯碗である。

企画展示に出陳された都市の碗と比較するとその差は歴然で、こちらが内面にも染付文様を配する丸形であるのに対し、都市の事例は内面が白無地の浅い器形が主体である。都会の人々が日々の食卓にも新たな息吹を取り込んでいく一方で、村落の人々は頑なに前代の様式を固持していたのだ。あたかも日本の食を変わらず支え続けていた彼らの矜持を示すように。

ただ、やがて大正の頃になると、都鄙共々同じ形に揃っていくことになる。
彼らの矜持も、また時代の大きな波に吞み込まれていったようである。

次回の更新予定
次回の更新は12月下旬頃を予定しています。